信託法上と金融機関の「遺言」、「信託」の違い
「信託」の付く紛らわしい言葉がたくさんあります。
特に、遺言にまつわる用語は、複雑で厄介です。ここではそれぞれの違いを説明します。
■信託を遺言代わりに使える場合
相続が発生する前にあらかじめ委託者が死亡後の受益者や残余財産の帰属権利者を定めておくことで、委託者が死亡したことによって、実質的な財産の所有者が委託者からあらかじめ定めた受益者や残余財産の帰属権利者に変更されるように設計することができます。つまり、信託行為を委託者の遺言代わりに使うことができます。
■遺言代用信託の主な違い
民事信託(家族信託)における「遺言代用信託」と金融機関の商品である「遺言代用信託」との主な違いは、図表2のとおりです。
■遺言信託とは
民事信託(家族信託)では、遺言の中に信託の条項が入っているものを「遺言信託」と言います。つまり、信託行為ではなくあくまで遺言です。
これに対して、金融機関が提供する「遺言信託」とは、遺言書の作成支援、保管、執行に関するサービス名であり、信託法上の「信託」とは異なります。両者の主な違いは、図表3のとおりです。
■二種類の信託の違い
信託法上の信託には民事信託と商事信託の二種類があります。
民事信託とは、財産の所有者の家族や親族など信頼できる人が財産を託され(受託者となり)管理や承継を行います。
もう一方の商事信託とは、信託会社や信託銀行が財産の所有者から財産を託され(受託者となり)管理や承継を行います。
今まで財産を信託したい場合には、商事信託を通して行うため信託会社や信託銀行の報酬がかかり、商事信託に対して民事信託は受託者である家族などは信託報酬を目的としないため、信託業法の制限を受けずに信託行為が行えます。